2月1日には、兼松講堂にて吉田特任教授による最終講義が行われ、戦後日本における軍事史研究と吉田特任教授の人生における経験とが重ね合わせられながら、自身の研究を支えた信念が語られた。「自分史のなかの軍事史研究」と銘打たれた本最終講義には、吉田ゼミのOB・OGをはじめ一般市民まで630人(主催者発表)もの参加者が詰めかけ、用意していたレジュメ500部がつきるほどの盛況となった。

 冒頭に長く同僚であった中野総教授の実績を紹介したのち、最終講義は、敗戦直後の日本史研究のなかで、軍事史研究が周縁へと追い出されていたという状況の概観から始まった。吉田特任教授は、そうした状況が戦後日本社会の平和主義を観念していた一方、戦場・戦争のリアルが忌避されてきたとした。

最終講義を行う吉田元特任教授

 次いで、最終講義は吉田特任教授の自分史へ移った。基地の街に生まれ家庭や地域社会の中に戦争体験の記憶があったなかで、小学生時代に集英社「ジュニア版太平洋戦史」のようないわゆる「戦史もの」を読みふけったこと、中学生時代にベトナム戦争の惨禍に強い衝撃と不条理を覚えたこと、大学生時代に軍事史研究に関心が生まれたことなど、自らの研究のルーツが語られた。

 最後に、吉田特任教授は、戦争犯罪や天皇制といった自らの研究について、「戦争の不条理さ、残酷さに対する怒り」が動機だとした上で、そうした「怒りを熟成し、『すんだ怒り・静かな怒り』に転化させていく」ことが研究者の仕事である、と総括した。

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