「今でも、優勝した心地はしない」。本学のお笑いサークル、IOK(一橋お笑い研究会)に所属していた野津俊一さん(平31商)は、昨年8月に開催された大学生のお笑い全国大会「大学芸会・個人戦2018」に出場し、優勝した。 王者の称号を得てもなお謙虚な野津さんの、お笑いに対する姿勢に迫った。

 

野津俊一さん

 現在はプロの芸人のライブに呼ばれることもあるという野津さん。お笑いを始めたのは大学2年の春だ。当時よく見ていたアイドル番組内のコーナーのひとつだったバナナマンのコントにあこがれ、IOKの新歓へ。新歓では一つ上の先輩によるコントの世界観に感銘を受け、入部を決めた。「こんなことをやってみたい、と本気で感じた瞬間だった」
 IOK入部後、コントのクオリティを着実に磨きあげ、入部3年目にして全国優勝を果たした。大会にエントリーした当時は、自分たちのお笑いが何がしか認められたら良いというくらいにしか思っていなかった。それ故か、優勝が決まった瞬間は「えらいことになったな」と感じたという。
 優勝を分かち合った相方については「本当に面白いものを目ざとく拾ってきて、ゼロからイチを生み出すパワーに長けている人」と評したうえで「一緒にネタを作るたびに、彼は天才だと思う」と尊敬の意を示す。

 野津さんのコント作りの秘訣は、日頃から面白そうだと思ったことをなんでもメモすること。「面白いことをいつでも即座に思いつくなんて無理。気づいたらなんでもメモして、コントに必要な設定を1個作ってみる。そこに絵や図を加えて、流れを考える」

コントのネタが詰まったメモ帳

 

 コントを行う上では、日常会話のような自然な演技を残しつつ、笑いどころではメリハリをつけることを心がけている。大きな声や面白い表情など、一発でお客さんを引きつけるパワープレーをタイミングよく行うのが野津さん流。ストーリー性と笑いどころの両輪が初めてかみ合ったコントは、今でも気に入っている一作だという。加えて「同じ台本のコントをやったとき『野津がやったのが一番おもしろい』と思われるような人になりたい」と、芸人としての理想像を語った。
 野津さんは、お笑いを通じて自分に自信が持てるようになったと話す。「お笑いを始める前は、歯を食いしばって大学に行っていた。一時期は気分が沈んで軽く引きこもりがちになっていたことさえあった。でも、今なら当時の自分を励ましてやることができる」。かつて所属していた体育会の同期からも、変わったな、と声をかけられたという。

 卒業後は通信業界大手に勤務し、社会人のコントグループでお笑いを続けるという野津さん。全国王者となってもなお、飽くなき求道精神は健在だ。

 

再生リスト:IOK卒業ライブ『いつもより大きな猫背』(2019/3/11)

『いつもより大きな猫背』より17. いわし雲『VR』

https://youtu.be/aFDn4T8sYIY