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親子二代、国立でおしぼり作り半世紀 FSX株式会社 藤波克之社長インタビュー

 
インタビューに応じてくれた藤波克之代表
工場内部での作業の様子

5月下旬、国立市に本社・工場を構え、おしぼりのレンタル、開発・製造事業を営むFSX株式会社の取材・見学を行った。代表取締役社長兼最高経営責任者の藤波克之氏にインタビューを行い、日本のおしぼりの持つ技術、日本のおもてなしの精神を世界に発信するFSX株式会社のビジョンや国立地域との関わりについて聞いた。
 
 ――本紙の読者に向けてFSXの沿革について教えてください。
 私の父が国立市谷保で1967年に貸しおしぼり業を創業したことが当社の始まりです。当初は町工場的な感じでおしぼりを製造し、それを飲食店などに貸し出すという事業を行っていました。私が父から会社を継いで以降は、従来のおしぼり製造業に加え、研究・開発、IT、化粧品など多方面に事業を展開しています。現在は海外進出にも取り組んでいて、当社の技術に加え、おしぼりの持つおもてなしの精神を世界に発信していきたいと考えています。
 
 ――おしぼりの持つおもてなしを世界に発信するということで、何かそれを体現した製品や事業はありますか。
 私が特に伝えたいものは当社の「VB」という特許技術です。VBはウイルスや菌を抑制することができる技術で、おしぼりの衛生を向上させることができます。
 おしぼりというと飲食店で出るようなおしぼり、熱いおしぼり、冷たいおしぼりといろいろなおしぼりが思い浮かぶと思います。ただタオルを水で濡らせば何でもおしぼりと呼べるからこそ、私はその裏にある技術や理念を伝えることが大切だと考えています。日本のおもてなしの要素を分解すると、ホスピタリティと衛生があります。おしぼりの持つホスピタリティとVBによる衛生は、日本のおもてなしを体現するものだと思っています。
 
 ――FSXの製品ですとアロマの香りがするおしぼり「アロマプレミアム」が人気だと伺いました。この製品はどのような経緯で開発されたのでしょうか。
 私が社長に就任して何か新しいことをしようと思った時に、100年後の人たちも喜ぶものって何だろうと考えました。そこでやっぱり暑いときに冷たいおしぼりがうれしいように、良い香りがするおしぼりは普遍的に喜んでもらえると思いました。またおしぼりは男性が使用するイメージが強く、女性が手にとってくれる商品を開発することも大切だと常日頃感じていたこともあり、アロマを使ったおしぼりの開発に至りました。実際に製造ラインの中で匂いつきのおしぼりを作る段取りを整備することって結構難しくて、製品化するまで苦労しました。
 
 ――国立市の市民芸術小ホールは「FSXホール」という名前が付いていますが、FSXと国立市の関わりについて教えてください。
 特定の地域に限らず世の中におしぼりで貢献したいという思いがあって、以前から被災地におしぼりを届ける活動などは行っていました。国立市に関しては、市長とお話しする機会があった時に、市のホールのネーミングライツをFSXが契約するという話をいただきました。新型コロナウイルスの流行時には国立駅前で手指衛生の啓発も行っていましたし、企業は地域の活性化に貢献するべきだと考えています。
 
 ――直近の話題ですと、大阪・関西万博にもおしぼりを提供されていると拝見しました。その経緯についてもお伺いしたいです。
 現在、万博の各国の来賓を迎えるための迎賓館にFSXがおしぼりを納品しています。海外から来たお客様に日本らしいおもてなしをしようということで、経済産業省の方からお声がけいただきました。なぜ省庁とのご縁があったかというと、経産省が知的財産制度の発展に寄与した企業に送る知財厚労賞を、過去に当社が受賞していたからです。当社の製品一つをとっても何種類もの特許、技術が使われています。普段の技術、知財への取り組みが今回万博のお仕事につながりました。
 
 ――最後に何か一言お願いします。
 今年7月から河口湖周辺で地域に密着したレストラン業をオープンします。「Expression」という名前で有名なフレンチのシェフ監修の下、本格的な料理を提供します。FSXの製品も店内で使用し、おしぼりと食を絡めた事業になっています。一橋の学生にもぜひ河口湖に遊びに来てもらいたいですね。