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国立本店 ~本棚から覗く 知らない誰か~

 生活必需品ではないはないが、誰もが持っている本という存在。国立の街にも本があふれている。駅構内にはカフェを併設するPAPERWALL。大学通りを歩けば、昔ながらの増田書店や洋書専門店である銀杏書房が並ぶ。これらの多様な書店が並ぶ国立の街には、本を中心にしたコミュニティスペースを営む国立本店という場所もある。

 書店や図書館の本棚には、本の種類の豊富さや本の探しやすさが求められる。その結果、規模が大きくなるほど似通った本棚が出来上がる。一方で、国立本店にある本棚はそういった本棚とは異なる色を見せる。本棚は多くのブロックに分けられており、運営するメンバー一人ひとりが1ブロックを担当し、本を並べる。様々な本で彩られているが、それらの本は売られているわけではない。多くの利用者はお店番のメンバーとのおしゃべりを楽しむ。自然と本棚に並ぶ本の話題になることが多いそうだ。

 国立本店では本が人と人を繋ぐきっかけになっている。これは書店や図書館では見られない光景だ。個人の本棚には好きな本を自由に置くことができる。同じジャンルの本ばかりを並べてもかまわないし、漫画、絵本、雑誌、文庫本をごちゃまぜにして並べてもよい。きれいに並べる必要もない。その結果、人それぞれの本棚が出来上がる。本棚に並ぶ本の種類だけでなく、本の状態や並べ方も様々だ。本棚は並べた人の人柄を色濃く反映する。

 個人の本棚は家の中にあり、基本的に公開されることはない。友達の家で本棚を見て、共通の本の話題で盛り上がったり、友達の新たな一面を見つけたりすることはあるかもしれないが、顔も知らない人の家の本棚を見ることができる機会はめったにない。

 しかし、国立本店では、メンバーそれぞれの個性が反映された本棚が公開されている。1冊の本に注目するにしろ、本棚全体の傾向に目を向けるにしろ、知らない人の本棚を覗き見るのは楽しいものだ。本を通して知らない誰かに思いをはせるという経験は、国立本店でしかできないものかもしれない。