【乱反射】

人が何かについて熱く語るのを聞くことが、病的に好きだ。その人の出生、出身高校の奇妙な伝統行事、好きな音楽、人生観……。テーマを彩る感情が喜怒哀楽のどれであっても、熱心な語り手の瞳はみな力強く、魅力的に映る▼そして、出先で見つけた名も知らない学校(中学でも高校でも大学でも)や、地方の寂しげな街中を歩きながら、もし自分がここに通っていたら、或いは住んでいたらと妄想するのも大好きだ。ぼんやりとした意識のなかで、並行世界の自分の人生を夢想する。この土地に生まれ育った人の感情や感覚を、自分なりにトレースして味わう▼つまるところ、「ありえたかもしれない別の世界」や「偶然性」について想いを馳せるのが好きなのかもしれない。見ず知らずの空間や時代に生きてきた人と出会い、今その人が眼前で熱く喋っていることの偶然のきらめき。彼が語る経験が、自身に起きていたかもしれないという並行世界の神秘性。奇跡や運命という言葉は陳腐だし、今の友人たちとの出会いがいちいち必然だったとも思わないけれど、確かにそこにはある種の美しさが感じられるのだ。様々な土地に生まれ育った人々がこの国立に集い、なんだかんだ共に生活しているという単純な事実すら、その偶然の積み重ねの途方もなさに天を仰いでしまう▼春になり、再びこの街の住人が入れ替わる。また幾たびも偶然に偶然が重なって、人と人の出会いが更新されてゆく。先輩方、ご卒業おめでとうございます。新入生の皆さん、一橋へようこそ。